朝日新聞WEB版(2003/06;01)掲載
新型肺炎SARS対策を進める世界保健機構(WHO)は18日、クアラルンプールで開かれた専門家会議で、日米を含む世界の研究機関が参加するワクチン開発ネットワークを立ち上げる方針を決めた。開発に必要となる情報や試料を共有し、効率的に研究を進める。WHOが特定の感染症のワクチン開発に乗り出すのは異例の事だ。(略)インフルエンザ対策などでは、WHOがウイルスや流行情報を公開し、メーカーによるワクチン開発を側面支援してきた。しかし、SARSでは実験に使えるウイルスが限られ、厳重な管理も求められることから、ワクチン開発に直接取り組むことにした。開発に成功すれば、ワクチン生産はメーカーに委託されるとみられる。WHOは3月半ば、SARS研究にかかわる9ヵ国13機関のネットワークを立ち上げ、情報や試料を交換しつつ研究を進め、わずか1ヵ月間で病原体を突き止めた。ワクチン開発でもこの手法が有効と判断した。ただ、開発に成功した場合の特許をどうするか、ほかの感染症対策とは異なる特別扱いをしていいのか、などの課題は残る。
nature communications 2015年7月28日(DNAを体内に投与することで、MARSの感染を効果的に防げるかもしれない)
「MARSコロナウイルス」に感染すると、重い呼吸器疾患がひきおこされる。感染を予防するワクチンはまだ存在していない。これまで研究されてきたワクチンは、コロナウイルス表面のタンパク質を攻撃する「抗体」を体内につくらせ、コロナウイルスの感染にそなえるというものだった。しかし、このようなワクチンでは、効果的にウイルスの感染を防ぐことができなかった。アメリカ国立衛生研究所のワン博士らは、MARSコロナウイルスの表面のタンパク質とともに、コロナウイルスのDNAの一部をマウスやアカゲザルに投与した。すると、MARSコロナウイルスに対するさまざまな抗体がつくりだされた。そしてその結果、アカゲザルでMARSによる肺炎を予防できた。ワクチンの開発では、タンパク質だけではなく、コロナウイルスのDNAを接種させる戦略が有望だと博士らは考えている。
令和2年4月28日 厚生労働省 (新型コロナウイルスに対するワクチン開発を進めます、第6報)
厚生労働省が創設に関わり、2017年より拠出を行っているCEPI(感染症流行対策イノベーション連合、本部:ノルウェー)は、4月27日、新型コロナウイルスに対するワクチンCOVID‐19ワクチンの開発を促進し、候補ワクチンを迅速に臨床試験に導くことを目的とし、新たに以下のパートナーシップ締結を発表いたしました。本年2月にCEPIが実験した公募(既報)を経て採択されたものです。(略)新型コロナウイルスに対するワクチンCOIVD19ワクチンの開発においては、これまで以下の8社とのパートナーシップ締結を行っている。Inovio社(米国)、クイーンランド大学(オーストラリア)、Moderna社(米国)、米国アレルギー感染症研究所(NIAID)、CureVac社(ドイツ)、Novavax社(米国)、オックスフォード大学(英国)、香港大学(中国)、パスツール研究所(フランス)、テーミス社(オーストラリア)、ピッツバーグ大学(米国)。
ポストコロナは世界の医療制度改革だと思う。新型コロナウイルスに対するワクチン開発は技術面から経済的な分野まで課題が多いようだ。ポストコロナはこの現実化した感染症の対策を元にして、自らの変化がどのような形で求められて行くのか、それぞれの国が問われることから始まるのではないだろうか。